工事現場で活躍中のパワフル掘削「ラムサス工法」って? 生み出したのは愛知・安城市のアイデア建設会社【サン・シールド株式会社】

2023年03月03日 10時00分更新

文● 初野正和
提供: 安城市

サン・シールドは展示会でも大好評のXR技術で建設工事を変えていく

 愛知県安城市は、持続可能なまちづくりとSDGsに取り組む企業・団体と共にSDGsの目標達成を目指す「あんじょうSDGs共創パートナー制度」を立ち上げ、現在190社を超える企業と団体がパートナーとして登録している。

 シリーズ企画として、そんな共創パートナー企業・団体を広く発信。事業内容やSDGsの活動をはじめ、地域との結びつきまで、「実はこんなユニークな取り組みを行っていた!」と、共創パートナー各企業・団体の知られざる魅力を深掘りしていく。第3回は、愛知県安城市に本社を置くサン・シールド株式会社を紹介する。

不可能を可能にするため自分たちで技術・マシンを開発!

 1987年に愛知県西尾市で創業したサン・シールド株式会社。15年ほど前に安城市へ本社を移し、東海3県を中心とした水道や下水道などの公共工事、建築工事、オリジナル機械・設備の設計・開発などの事業を展開。現在はインフラ事業を多角的に展開し、都市・環境をトータルプロデュースする会社として活動している。

 もともとは下水道工事の施工管理業者としてスタートした同社。地中に穴を掘って下水道菅を通す工事について、人員の手配や安全管理、工程管理など、現場をまとめていくのが施工管理の仕事だ。チャレンジ精神あふれる同社は、施工管理だけでなく実際の工事も担当するようになり、少しずつ事業領域を広げていった。ところが、さまざまな現場を経験していくうちに、とある課題に直面した。

 「地中にトンネルを掘る際はシールドマシンと呼ばれる機械を使います。しかし、石や砂が混ざった土質では、対応できないこともあったのです」と、話すのは代表取締役の米森清祥さん。

 そこで、たどり着いた答えが「オリジナルの機械を造ってしまおう」だった。そうして、米森さんはアイデアをひねり出し、メーカーなどと協力して「ラムサス工法」を開発した。ラムサス工法は、カッターヘッドを付け替えることで、硬い土から柔らかい砂まで幅広い種類の土質に対応できる技術で、今では業界内でも普及している。

ラムサス工法を用いた工事現場のイメージ

 このラムサス工法を応用して、サン・シールドは多種多様なオリジナルマシンを開発。その代表が200型ラムサスで、直径200mmの小さな穴を一度に150mほど掘ることができる。これほど長い距離を一度に掘れる技術は、世界でもほとんど見られていないそう。

XR技術の導入で、現場だけでなく予想以上の効果が!

 5年ほど前から「XR技術」の導入にも力を入れている。XR(クロスリアリティ)はVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などを融合したもので、新しい体験をつくり出す技術を指す。

 建設業界での実用例を挙げるなら、工事現場の風景を撮影し、そこに重機やプレハブをどのように配置して工事を進めるかiPadを見ながらシミュレーションしたり、事務所にいながら遠方にいる作業員に映像を用いて指示を出したりすることができる。こうした技術を広めるために「中部インフラ技術発表会」での発表や、東京ビッグサイトで行われた「建設DX展」への出展なども行っている。

 XR技術の導入は、現場の効率化はもちろん、思いもよらぬ効果も生んでいる。「建設業界は人材不足が叫ばれていますが、XR技術を取り入れることで、若い方々に興味を持ってもらえるようになったのです。インターンシップで来てもらった学生に評判がよく、新卒で女性社員が2人も入社してくれました。まさかリクルートでも効果を発揮するとは」(代表取締役・米森清祥)

測量を行う女性社員。女性の活躍も増えれば業界の未来も明るい

 アイデアマンの米森さんは「安城駅を歩いていると、ガラスのようなブロックを敷いた歩道があるのです。これは何か自然エネルギーにできないかと思いまして。今、特許を取得して、チャレンジを始めたところです」と早くも次を見据えて行動している。

 SDGsの取り組みにも全力だ。代表的な活動が月1回行う「ゴミゼロ活動」。

「自分たちがお世話になっている会社や工事現場の周辺を掃除しています。工事が始まると、騒音が気になったり、迂回が必要だったり、近隣の方々にストレスを与えてしまうことは少なからずあります。それなら少しでも気持ちいい環境を自分たちでつくろうと、10年ほど前からスタートしました。工事中はその日の工事終了後に道路を清掃しています」(代表取締役・米森清祥)

ゴミゼロ活動の様子。SDGsが叫ばれる前から取り組んできた

 工事は裏方の仕事に違いない。ところが、見ている人は見ているもので「ありがとうね」の言葉はもちろん、「あそこの工事もサン・シールドさんならよかったのに」と声をかけてもらったこともあるそう。

 先程紹介した200型ラムサムは安城市赤松町の下水道工事で活躍した。立地条件的に複数の穴を掘るのが難しかったので、200型ラムサムを使用。既存のマシンでは横に向かって80mほどしか一度に掘れず、そのたび地上に縦穴を掘る必要がある。しかし、200型ラムサムなら150mを一度に掘ることができるので、竪穴を少なくし工程や周辺環境への負担を軽くすることができた。最近は、さらなるXR技術の導入やロボット開発を目的に、産学連携(民間企業と大学が連携して新技術の創出を図ること)にも取り組み、無人化、省力化、効率化に向け、新しい連携でSDGs技術革新を行っている。

 アイデアを武器に業界の仕組みを変えていく、ありそうでなかった建設会社、サン・シールド。次のあっと驚くアイデアを楽しみにしていたい。

(提供:安城市)

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