東京・浅草の人気店「忍者焼肉」に聞く! ハラル対応の焼肉が成功した理由

2026年03月16日 13時15分更新

インバウンド需要により、昨今はムスリム(イスラム教を信仰する人)の旅行者も増加。ムスリムの人は信仰上、豚肉や豚に由来する食品、アルコールなどが禁じられているため、ハラル対応の飲食店は重宝されています。その一つである、東京・浅草の人気店「忍者焼肉」の代表・山村美砂さん、マネージャーのアダムさん、料理長の松本慎也さんに、詳しく話を聞きました。

希少部位7種を盛りわせた「A5ランク伊賀牛・忍者焼肉タワー」

ハラル認証の伊賀牛を一頭買い! 多彩な部位が味わえる

――「忍者焼肉」はどんなお店ですか?

山村さん:24年4月に開業した伊賀牛専門の焼肉店です。浅草には世界各国から観光客の方が大勢いらっしゃるので、国籍・宗教を問わず、誰もが安心して食事を楽しんでほしいという思いで店を開きました。

伊賀牛は三重県伊賀市のブランド黒毛和牛で、そのハラル認証肉のみを取り扱っています。伊賀牛自体、東京で食べられる店が少なく、ハラル認証の専門店はおそらくここだけではないでしょうか。

伊賀は忍者の里としても有名で、外国人のお客様に覚えてもらいやすく、浅草の街のイメージにも合っていると思ったので「忍者焼肉」と名付けました。25年8月には日暮里店もオープンして、現在は2店舗を展開しています。

――伊賀牛の魅力、料理へのこだわりを教えてください。

松本さん:ほかのブランド黒毛和牛に比べて霜降りが美しく、脂がしつこくないのが特徴です。実際に伊賀牛の生産者さんに話を聞いたのですが、飼料の配合にもこだわり、脂がくどくなく、それでいて脂の甘味が際立つように工夫した飼料を与えているそうです。赤身も柔らかく、旨味をしっかり感じられます。

そんな伊賀牛のハラル認証を得ているもののみを一頭買いしています。そのため、約30種もの部位を食べ比べできるのがウリです。看板メニューは「A5ランク伊賀牛・忍者焼肉タワー」(2万4,800円/3、4名用)。本日の希少部位6種と、サーロインまたはリブロースの厚切りステーキの盛り合わせです。ほかにはA5ランクの伊賀牛の食べ放題も人気です。

――浅草店を訪れるお客様の外国人比率は?

アダムさん:9割以上が外国人観光客です。国別ではマレーシア、インドネシア、シンガポール。次いでバングラデシュ、パキスタン、エジプトと、ムスリムの方が大多数を占めています。あとは韓国やタイのお客様も最近増えています。

スタッフも多国籍です。私自身はエジプト出身のムスリムで、ほかに、日本人、バングラデシュ人、ミャンマー人が在籍していて、日本語、英語をはじめ、4・5カ国語に対応できます。とはいえ、ムスリムの方はたいてい英語が話せますし、今は翻訳アプリもあるので、ハラル対応の店だからといって、お客様とコミュニケーションを取ることはそれほど難しくはありません。

店舗で提供される肉はすべてブランド黒毛和牛・伊賀牛を使用

タレや手作りのサイドメニューもすべてハラル対応

――ハラル対応の焼肉店をオープンしようと思った経緯は?

山村さん:パートナーでもあるアダムとは付き合いが長く、彼が日本での食事に苦労しているのを目の当たりにしてきました。一緒に外食する時は、事前に「豚肉は使っていないか? アルコールはないか?」を確認するんですが、特に和食でハラルに対応している店がまだまだ少ないのが現状です。

そうした中、3年くらい前にハラル対応の焼肉店を見つけて、2人で食べに行ったところ、すごく美味しかったんです。その時「こういうお店がもっとあったらいいな」と思ったのが開業したそもそものきっかけです。

同時期に、今度はネットでハラル対応の牛肉を探している中で、たまたま伊賀牛を見つけました。さっそく取り寄せて食べてみたら、あまりのおいしさに衝撃を受けました。神戸牛にも負けない極上の味わいで、「この肉をムスリムの方にも味わってもらいたい」と思い、自分たちで店を出すことを決めました。伊賀牛は年間出荷頭数が少なく、ほとんど三重県内で消費されているんですが、卸売り業者さんに直接連絡して思いを伝えたところ、快く卸していただけることになりました。

――ハラル対応の焼肉店を始めるにあたって苦労した点は?

松本さん:国内でハラルに対応可能なと畜場は極めて少なく、西日本では四国と九州に1カ所ずつあるだけです。そのため依頼が集中する時期は、予約制で順番待ちになることも少なくありません。下手をすると1カ月待たないといけないこともあるので、在庫状況を確認しながら、発注するタイミングを見極めるのが大変です。また、通常とは異なり店舗で部位を切り分ける作業も発生するため、非常に労力もかかっています。

――牛肉以外の食材の選定、調理過程などで注意していることはありますか?

山村さん:店で使用する食材はすべてハラル対応のものを探しました。例えば、タレも醤油をはじめハラル対応の調味料で作ったもので、アルコールの類いはもちろん不使用です。すべてがハラル対応でなければムスリムのお客様に食べていただけないので、その点は徹底しています。

松本さん:ナムルやキムチといったサイドメニューは、すべて手作りしています。自家製だからこそ食材をすべて把握できるので、お客様に自信を持って提供することができます。メニュー作りで特に苦労したのがスープです。一般的な店は鶏ガラでダシを取りますが、使用する鶏ガラが本当にハラル対応なのかは確証が持てません。そのため鶏ガラは使わず、ハラル食材でダシを取ったスープを考案しました。

――料理に対するムスリムのお客様の反応はいかがですか?

松本さん:日本に旅行に来て、初めて和牛を食べたというお客様が多いんですが、ヒレやシャトーブリアンといった赤身系が特に人気が高いです。ナムルなどのサイドメニューも評判がいいですね。とても気に入っていただき、来日するたびに足を運んでくださるお客様もいらっしゃいます。

タレやサイドメニューもすべてハラル対応となっている

サービス面でもいいイメージを持って帰ってもらうことが大事

――ハラル対応を検討している飲食店へのアドバイスはありますか?

山村さん:まずはハラルに対する正しい知識を持つことが大切です。例えば、アルコールの取り扱いについては、使用するグラスも分けなければいけません。最初はチェックが大変だと思いますが、地道にしっかりやっていけば、いずれ認知され、ムスリムのお客様がわざわざ探して来てくれるようになります。

松本さん:私は英語が正直得意ではないんですが、身ぶり手ぶりで海外のお客様とコミュニケーションを取るように心がけています。加えて、感謝の気持ちとして、ちょっとしたサービスの品をお出ししています。お客様には料理はもちろん、接客を含めたサービス面でも「素晴らしい体験だった」というポジティブなイメージを持って帰っていただくように努めています。その結果、SNSなどで高評価の口コミを書いてくださるお客様が増えました。自身もリピーターになってくれていますし、新しいお客様を紹介してくれることにもつながっています。

――最後に、ご自身がムスリムであるアダムさんに伺います。今後どのようなジャンルのハラル対応の店があったらいいと思いますか?

アダムさん:パキスタン料理のほか、ラーメンやハンバーガー、そして焼肉と、ここ数年でハラル対応の専門店は着実に増えています。しかし、和食に関してはまだまだおいしい店が少ないと感じています。お寿司や天ぷら、しゃぶしゃぶなど、ムスリムでも安心して食べられる店がもっと増えればうれしいですね。

店舗入り口にはハラル認証を受けた認定証が掲げられている

■「忍者焼肉」店舗情報

<浅草店>
営業時間:11:00~23:00(LO22:30)
定休日:不定
住所:台東区浅草1-16-11 The Room浅草7F
アクセス:各線浅草駅より徒歩5分

<日暮里店>
営業時間:11:00~23:00(LO22:30)
定休日:不定
住所:東京都荒川区東日暮里6-60-1
アクセス:JR日暮里駅より徒歩2分

東京のハラル対応の飲食店を知るなら
『東京ムスリム旅行者ガイド2026-2027』

「忍者焼肉」も掲載されている『東京ムスリム旅行者ガイド2026-2027』は、東京観光財団発行の外国人旅行者向けガイドブックで、ハラル対応の都内飲食店をはじめ、ショップ、ホテル、病院、礼拝施設を約200軒掲載しています! また、東京の郷土料理や都内の四季の絶景を集めた情報も、併せてご紹介しています。

東京観光パンフレットギャラリー
https://www.gotokyo.org/book/list/6920/

「東京ムスリム旅行者ガイド2026-2027」

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