リサイクル企業がミツバチと共生!小学校で出前授業! 業界のイメージシフトにまい進【加山興業株式会社】

2023年03月02日 10時00分更新

経営企画室の社員が中心となってミツバチの飼育に当たっている

 愛知県安城市は、持続可能なまちづくりとSDGsに取り組む企業・団体と共にSDGsの目標達成を目指す「あんじょうSDGs共創パートナー制度」を立ち上げ、現在190社を超える企業と団体がパートナーとして登録している。

 シリーズ企画として、そんな共創パートナー企業・団体を広く発信。事業内容やSDGsの活動に加え、地域との結びつきなど、「実はこんなユニークな取り組みを行っていた!」と、共創パートナー各企業・団体の知られざる魅力を深掘りしていく。第2回は、愛知県豊川市に本社を置く、加山興業株式会社を紹介する。

知識ゼロからのチャレンジ!養蜂事業を通して地域貢献!

啓発活動や社会貢献活動に力を入れる加山興業

 1961年に設立した加山興業株式会社。“Our Planet, Our Home”“緑あふれるクリーンな日常を世界に”をビジョンに掲げ、産業廃棄物の適正処理・リサイクルを中心に事業を展開。大きく分けて六つの戦略的重要課題を設定し、各項目の中で、持続可能な開発貢献が可能なプロジェクトをいくつも立ち上げ、成果目標を軸に運用している。

 複数あるプロジェクトの中でも、珍しいのが養蜂事業「KAYAMAみつばちプロジェクト」だ。構想がスタートしたのは2014年頃。東京都などの都市部でミツバチとの共生が話題となった。ミツバチは環境指標生物といわれ、恵まれた環境にしか生息しない。また、ミツバチは果物や野菜などの農作物の受粉結実の6割近くに関与するといわれている。「ミツバチを飼育することは環境保全や地域貢献につながる」そんな思いからプロジェクトが立ち上がった。

 海外のインフラ企業が、環境アセスメントの一環としてミツバチを飼育していることも知った加山興業は、自社の事業が環境に悪い影響を与えていないことを証明するために、敢えて豊川市にあるリサイクルプラントの横に養蜂場を作った。

 経営企画室の中嶋あゆみさんは「知識もノウハウもゼロからのスタートでした。養蜂家の元を訪れて勉強し、協力会社のサポートも受けながら少しずつ形になり、今では30群ぐらいのミツバチを飼育しています」と話す。

 ミツバチから採取した蜂蜜を分析すると、重金属等を初めとする有害物質が入っていないことが確認された。現在、この蜂蜜を使って地域の事業者とコラボレーションし、ハニービールやワッフルなどを開発している。養蜂場の見学や収穫祭なども開催。ミツバチが地域との連携を生み、環境に対する社会的な評価も獲得し、成功例のプロジェクトとして今も成長を続けている。

地域交流の機会にもつながっている収穫祭「ハーベスト」の様子

蜂蜜を使用した地域店舗とのコラボ商品

自分たちの事業を正しく認識してもらうために

 養蜂事業もそうだが、地球環境と密接な事業を行っている企業だからこそ、SDGsに対する取り組みは非常に力を入れている。企業に向けたSDGs実装を支援するサービスの提供や、リサイクル率の向上に向けた設備導入、さらに安城市で行われたSDGsセミナーの講義にも登壇した。セミナーでは、SDGsの取り組みが企業にとって中長期での存在意義になる点などを紹介した。

 最近では、太陽光パネルの自動処理設備を導入。2030年頃から太陽光パネルの処分は社会的な課題の一つになると見据え、大規模な先行投資を行った。

太陽光パネルの自動処理設備。従来よりも1日の処理量が拡大に上がった

 もう一つ、注目すべきプロジェクトに、ごみの分別やリサイクルの重要性を伝える「環境授業」があり、10年以上継続して取り組んでいる。開始の背景には、廃棄物処理における間違った認識を改めたい想いがあった。2010年頃、会社周辺の通学路で、小学生たちが口を塞いで歩いていた姿を目撃。理由を聞けば「親からそうするように教えられた」と話していたという。

「環境に貢献しているはずの企業が、まるで環境を破壊しているような認識をされていること。安心安全の手順で処理しているのに、それが正しく理解されていないこと。こうした誤解を解き、正しく理解されることが大切だと考えました」(経営企画室・中嶋あゆみ)

 授業内容は、パッカー車(ゴミ収集車)の乗車体験や分別ゲームなどを取り入れて、子どもたちが退屈せずに学べるよう内容をブラッシュアップさせてきた。毎年のようにリピートを依頼する学校も増え、今では年間1000〜2000人の小学生を対象に環境授業を行っている。安城市の小学校でもこれから開催していきたいと考えているそう。

環境授業の様子。子どもたちが退屈しないように工夫を重ねている

パッカー車の仕組みについて小学生に説明する様子

 加山興業は小学生への授業をはじめとした環境保全に関する普及啓発活動に力を入れてきた。今では正しい認識が徐々に広がり、環境授業を通して知り合った家庭から仕事の依頼を受けることもあるそう。SDGsの考え方が広まりつつある昨今、地域とのつながりや持続可能な企業運営を基準に企業を選ぶ人が増えていくことが予想される。その中で10年以上前より先駆的に取り組みを開始し、現在まで深く追求し続けているところに加山興業の美学を感じ、今後も応援していきたいと思う。

 豊川市を中心に産業廃棄物の処理を行っていた会社が、今では事業領域を広げて、環境や地域に貢献する環境ソリューション企業へ進化。美しい地球を守るために、そして業界のイメージを変えるために、加山興業のチャレンジはこれからも続いていく。

(提供:安城市)

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