行政、企業、そして市民が一体となって、アイデアを出し合ってきた!

シーホース三河の新アリーナのつかい方を大発表! ワークショップ半年間の集大成「つかい方フォーラム」開催

2024年04月11日 10時00分更新

文● 初野 正和
提供: 安城市

ワークショップ参加者及び関係者で記念撮影!大成功に終わった「つかい方フォーラム」をレポート!

 2024年3月17日(日)、グランドティアラ南名古屋で「つかい方フォーラム」が開催された。B.LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム「シーホース三河」の新本拠地(以降はアリーナと表記)が2026年に完成予定。安城市では、昨年10月に開催された第1回ワークショップから数えて約半年間、行政、企業、そして市民が一体となって、誕生をひかえるアリーナのつかい方についてアイデアを出し合ってきた。

 第1回では、生活の中にあるワクワクする瞬間やホッとする瞬間について話し合い、第2回では、ワクワクする瞬間やホッとする瞬間をヒントに、アリーナを日常と非日常に分けたつかい方について考えた。第3回では、アリーナのつかい方のテーマを決めるグループワークに加えて、シーホース三河のホームゲームをみんなで観戦。第4回では、グループごとに具体的なアイデアをまとめていった。第5回で「つかい方フォーラム」に向けた資料作成などを行い、この日でいよいよ集大成を迎えることとなった。

 全5回すべてのワークショップに参加してきた方も大勢おり、第1回から最後まで参加者数はほぼ横ばい。「一般的には減っていくものですが、これは本当にすごいことです!」と関係者も驚くほどで、それほど熱心に、楽しく、まちから愛される「みんなのアリーナ」のあり方を考えてきた。

ワークショップ参加者に加え、シーホース三河やB.LEAGUE関係者、一般参加者も含めて150人以上が集合!

多くの人が参加した「つかい方フォーラム」

 フォーラム当日は、これまでワークショップをサポートしてきたシーホース三河の佐古賢一シニアプロデューサーをはじめ、B.LEAGUE関係者、まちづくりの有識者、一般参加の方々、さらに報道陣など、150人以上が会場に駆けつけた。

開会の挨拶を述べる三星元人 安城市長

 安城市の三星市長の挨拶で、第一部が開幕。安城市職員によるこれまでのワークショップの振り返りがあり、いよいよワークショップに参加していた各グループの発表がスタート。どのようなアイデアが紹介されたのか、発表された順番に紹介していく。

みんなが考えたアリーナのつかい方を発表!

■グループ名/バスケ部〜!

 子育て世代が多い『バスケ部〜!』は「あう&いやし」をテーマにしたアイデアを提案。「あう=合う・会う・meet」「いやし=食べる・観る・見る」など、さまざまな意味を含んでいる。イラストが盛り込まれたプレゼン資料は、グループに参加する子どもたちが描いたそう。子どもの目線を大切にしつつ、親も楽しめる、癒される場所になってほしいとの思いを伝えてくれた。

<アイデア>
◯家族で体を動かせるスペース
◯休む(飲み物+育児相談)
◯睡眠ができるスペース
◯読書ができるスペース
◯大人もくつろげる個室

『バスケ部〜!』を代表して発表するアキさん

かわいいイラストを多用したプレゼンに思わずほっこり

■グループ名/ハイスクール

 「一人でもみんなでも、どんな世代でも、居心地良く過ごしたい!」をテーマに「体を動かすこと」「食事を楽しむこと」の2つを柱にしたアイデアを提案してくれた。発表してくれたのは高校生のフジマキさん。抑揚をつけつつ、ハキハキと語り、講演家も顔負けのプレゼンに驚かされた。ニュースポーツのアイデアはすぐにでも実現できそう!

strong><アイデア一例>
◯ニュースポーツを楽しむ空間(ピックルボール・ZUMBA・卓球など)
◯安城市の歴史と文化が学べるコーナー(特産品の販売・カフェ・アニメなど)

『ハイスクール』を代表して発表するフジマキさん

ピックルボールは生涯スポーツとしても注目されている

■グループ名/お酒大好き

 「親と子が解放される空間にしたい」がテーマ。仕事や子育てで疲れている世代に向けて、リラックスしたり、ストレスを発散できたりするコンテンツや空間を提案してくれた。「アリーナを、思う存分解放できる自分のホームに」のメッセージが素敵だった。子どもたちは思い切り遊べて、親は子どもから目を離しても大丈夫。そんな場所ができれば重宝されるはず。

<アイデア>
◯大型モニターで電車の映像が流れる空間
◯子どもたちが思い切り遊べるプレイルーム
◯大人も子どもも寝そべられる空間

『お酒大好き』を代表して話してくれたキョウさん

親と子の視点を大切にしたアイデアが満載だった

■グループ名/忘れがちで愉快な中年達

 こちらは「一人で楽しむアリーナの日常」がテーマ。代表のたにさんはITに精通していて、以前から「ITと一人で過ごすことは親和性が高いと思う」と話していた。プレゼン資料のデザインはもちろん、AIを活用した発表もあり、あまりのクオリティの高さに会場からはどよめきが。こんな人たちが真剣にアリーナのつかい方を考えてくれるなんて...安城市のポテンシャルを感じずにはいられない!

<アイデア>
◯Chat botを使ったアリーナリアル脱出ゲーム
◯安城市を舞台としたAIレーシングゲーム
◯ランニングステーション
◯ライブハウスで音楽を楽しみながらお酒・飲食を楽しむ
◯子どもを預けられる保育所やデイサービスのような場所

『忘れがちで愉快な中年達』を代表して発表するたにさん

AIを活用したプレゼンに驚き!ITの可能性を教えてくれた

■グループ名/佐古Army

 高校生が中心のグループで、バスケに興味がなかったのに、ワークショップを通して佐古さんのファンに心変わり。それで『佐古Army』と名付けたそう。テーマは「なんでもレンタル体験」。お金をかけず、手軽にいろいろな体験を楽しめるサービスを提案してくれた。「学生はあまりお金が使えません!」の言葉に、何事も大人目線で考えてはいけないとハッとさせられた。

<アイデア>
◯レンタル体験(楽器の試し引き・VR体験・各種体験教室など)
◯移動式サウナ
◯スポーツが楽しめる空間
◯睡眠スペース

『佐古Army』の3人。スマホをカンペに発表するところが学生らしい!

「家ではできないことをしたい!」と思いを伝えてくれた

■グループ名/めちゃホース

 テーマは「みんなでスポーツを楽しむ!!」。安城市には運動施設が少なく、いざスポーツをしようにも場所の確保が難しいとのこと。そこでアプリを活用した予約システムを提案。専用アプリを通じてスポーツ好きがつながり、集まり、一緒に汗を流す日常を紹介してくれた。プレゼンでは、子どもたちによるお芝居も披露された。アイデアとユーモアにあふれたプレゼンに、会場から拍手が送られた。

<アイデア>
◯専用アプリの開発
〇大型ビジョンでスポーツ観戦
〇大人はカフェでゆっくりしつつ、子どもはアスレチックで遊ぶ

『めちゃホース』を代表して発表するだいぼーさん

子どもたちのお芝居もあり、アイデアとユーモアがあふれる発表だった

地域の方々と一緒に作り上げ、10年後や20年後には市民の誇りとなるアリーナに

 こうして全6グループの発表が終了。素晴らしいアイデアの数々を受けて、これまでワークショップを一緒に伴走してきた愛知学院大学の内藤正和准教授が総評を述べた。

 内藤准教授は「超複合的なつかいかた」「つくりすぎないアリーナ」の2つのキーワードを挙げた。「超複合的なつかいかた」は、ソフトの複合という意味で、いろいろなアイデアを実現できるアリーナ(ハード)が求められていること。そして「つくりすぎないアリーナ」は、ソフトを決めて建設することも大切だが、そこに固執すると汎用性が損なわれてしまうこと。

 「アリーナが完成するとまちが変わります。しかし、バスケットボールやイベントがない日のほうが多い中、つかっていない日のコンセプトが決まっていないケースがあります。今回、テーマをみんなでまとめたことは可能性を広げたと思いました。地域の方々と一緒に作り上げ、10年後や20年後には市民の誇りとなるアリーナになってほしいです」と内藤准教授。

 さらに「いろいろな自治体のワークショップをコーディネートしてきたが、ここまで幅広い世代が参加するワークショップは見たことがない」とも述べ、市民の意欲的な姿勢、アイデアの共有や共感についても高く評価した。

総評を述べる愛知学院大学の内藤正和准教授

 内藤准教授に続き、シーホース三河の寺部社長が登壇。充実した表情で、発表を受けての感想を述べた。

 「どんな提案や発表があるか楽しみにしていましたが、いろいろな発表方法があって内容も期待以上でした。多くのアイデアと熱意をいただき、皆様に期待されていることを実感しました。シーホース三河にとっても、新しいカテゴリーで戦うための夢のアリーナになります。提案いただいたアイデアを一つずつ実現させ、地域の皆様が笑顔になるアリーナになればと思っています。このフォーラムをもちましてワークショップは一区切りとなりますが、かけがえのないアリーナになるように私たちは努力していきますので、これからもご協力よろしくお願いいたします」

シーホース三河の寺部康弘社長

こんな自治体、ほかにない!? 行政、企業、市民が手をとって駆け抜けた約半年間

 第二部では「アリーナのある、まちの未来」を題材に、有識者を迎えたパネルディスカッションが行われた。EY Japanの岡田 明さんの進行のもと、MINTO 機構の渡邉浩司さんは、地域住民が主体となったまちづくりの重要性について、さまざまな事例を交えて紹介してくれた。

パネルディスカッションに登壇した5名。左から岡田 明さん、佐野正昭さん、鈴木秀臣さん、渡邉浩司さん、都筑 拓さん

 B.LEAGUE専務理事を務める佐野正昭さんは、B.LEAGUEが目指している夢のアリーナは「夢のまちの実現」であることを話し、シーホース三河の鈴木秀臣シニアドバイザーは、アリーナの仕様や建設コンセプトについて紹介してくれた。市民を代表して、株式会社夢花の代表を務める都筑 拓さんも参加。アリーナのあるまちについて、さまざまな意見を交換した。

 アリーナを通したまちづくりに関しては、渡邉さんから「郊外に建てられるアリーナが多い中、安城市の場合はまちの中心部にできること、アクセスの利便性など、すでにできあがっている場所にできること、そしてワークショップ等を通して、まちが温まっていること。これらが特徴です。安城市のアリーナはまちづくりの先進事例になるのでは」との意見があった。

 一方、そこに住む市民の意見として、都筑さんは「自分たちがアリーナを使えると思っていませんでした。ワークショップの相談を受けたとき、『早すぎない?』と感じたんです。でも、ワークショップをやっているうちに、今から動かないと間に合わないなと。また、現在のアリーナのあり方を知って驚きました。アリーナに対する解像度が上がり、地域の人たちにとってもジブンゴトになってきたと思います」と話す。

 また、佐野さんは沖縄アリーナなど各地域の事例を交えつつ、「ハードもソフトも進化できるアリーナはどこにもありません。そこに期待しています」と評価した。

 それぞれの立場でディスカッションが進む中、コーディネーターの岡田さんはディスカッションを次のようにまとめた。

 「アリーナだけではなく、周辺のまちも含めた『オール安城』でつかっていくという気持ちが大切。世界に自信を持って発信できるアリーナだからこそ、全員がジブンゴトとしてアリーナを、まちをつかい、どんどんアップデートしていきながら、多くの人が集まれる環境をみんなでつくっていきましょう。そしてみんなで新しい未来をつくっていきましょう」

 みんながアリーナ誕生を期待していることが十分伝わったところで、パネルディスカッションは終了した。

 最後にアリーナの建設主体である株式会社アイシンから中村裕司 副本部長の挨拶があり、約2時間半にわたって行われた「つかい方フォーラム」は終了。アリーナの未来、まちの未来を考え、想像できる有意義な時間だった。

閉会の挨拶を行う、株式会社アイシンの中村副本部長

佐古賢一シニアプロデューサー、グループコーディネーターがワークショップを振り返る

 イベント終了後、これまでワークショップをサポートしてくれた佐古賢一シニアプロデューサー、そしてグループコーディネーターの方々に話を聞いた。

 まず、佐古さんについて改めて紹介しておくと、現役時代は「ミスター・バスケットボール」と呼ばれ、引退後もプロチームのヘッドコーチを務めるなど、バスケ界では知らない人はいないほど。そんな佐古さんが熱っぽいスピーチで、ときには無邪気な笑顔で、市民と一緒にワークショップを盛り上げてくれた。

 「ワークショップ、そして今日のフォーラムを通して、一歩ずつアリーナが進んでいることを感じました。三河の人たちは受け入れてくれる雰囲気を持っていると思います。僕はバスケットをやっているコミュニティの中では知られているかもしれないですが、こういった場所ですとまったく関係ありません。そんな僕を受け入れてくれました。温かい雰囲気があり、僕も飾らず、素の自分で皆さんと接することができました。自分自身も成長できた時間でしたね」(佐古賢一シニアプロデューサー)

ワークショップおよびフォーラムに参加しての想いを語ってくれた、佐古シニアプロデューサー

 グループコーディネーターのメンバーは、まちのキーパーソンとして各グループの意見をまとめ、ワークショップをサポートしてきた。この人たちがいなければ成立しなかったと言ってもいい。

左から名古屋産業大学准教授の今永典秀さん、Café&delica NEJIの村澤有紀子さん、株式会社夢花の代表を務める都筑拓さん、ママさんバンド フルーツキッズおよび寺子屋『Dear。。。』の渡邉裕子さん、司会進行を務めてくれたPitch FMの勅使河原正直さん

 「終わってみたら早かったですね。ワークショップが進むにつれて出席率が低くなると思っていましたが、最後まで大勢の方が参加してくれました。それがすごかったですし、楽しかったです。ありがとうございました」(都筑さん)

 「私のグループはバスケの話が多かったので、ついていくのに必死でした。安城をバスケで盛り上げたい気持ちを感じましたね。バスケを使ったまちおこし。これからは自分も発信できたらいいなと思っています」(渡邉さん)

 「対話ってとても大切なんです。ワークショップに参加してくれた方々の何割かは実感できたと思いますが、世の中には対話が大事と分かっていない方がまだまだいると思います。こういうイベントがずっと続いていくといいですね」(今永さん)

 「私は安城が大好きです。子育て世代の方々と話す中で感じたのは、孤独や不安を解消できる場所ができたら、もっと安城が自慢できるまちになるはず。それが理想で終わるのではなく、アリーナの誕生によって叶うのでは。そう思えた時間でした」(村澤さん)

参加者には、嬉しいお土産も

 今回のフォーラムでは、来場者全員にオリジナルキーホルダー、そして山崎製パン株式会社からシーホース三河とのコラボ商品がプレゼントされた。コラボ商品はトラック型パッケージに入ったパンの詰め合わせで、安城市に工場を持つ地元企業からの嬉しいサポートだ。加えて、半年にわたってアリーナのつかい方のアイデアを出し合ってきたワークショップの参加者には、オリジナルタオルも贈呈された。

来場者全員にプレゼントされたキーホルダーとワークショップ参加者に贈呈されたオリジナルタオル

佐古シニアプロデューサーより贈呈を受ける、ワークショップ参加者のウチダさん親子

アリーナ誕生がジブンゴトに。まちは、必ず変わる

 2026年からスタートするB.LEAGUEの新たなフォーマットに向けて、日本各地でアリーナ計画が進行している。シーホース三河のアリーナ建設もその一環で、すべての状況を把握しているわけではないが、ここまで行政、企業、そして市民が一体となって、完成する前からみんなでアリーナのつかい方を考えている地域はないのではないかと思う。このパワーが増幅していけば、前回のワークショップで佐古さんが話した「三河安城駅を新横浜駅のように」の言葉も、あながち夢ではないように思えてくる。

 この半年間を振り返ると、多くの安城市民にとってアリーナが「ジブンゴト」として、身近な存在に変わったように思う。フォーラムで提案されたものだけでなく、ワークショップで参加者が出してきた無数のアイデアは、まちの財産となったはず。みんなのアイデアがどのように実現していくのか、その日を楽しみにして待っていたい。

アリーナの外観パース。三河安城駅周辺に2026年10月誕生予定だ

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